ひびこれよきひ

日々の生活の中のちょっとした発見や旅先でのことなどを書いていきたいと思います。

屋久島旅行 〜 4日目 台風と屋久島 〜

4日目の朝は風の音と共に起きた。強風が草花を揺らし、ガサガサと音を立てる。台風が近づいているのだ。昨日の天気予報では今日は晴れだし大丈夫だと思うんだけど、この強風だと波が高そうだ。今日は家に帰る日だけど、フェリー大丈夫かな?


一抹の不安を覚えつつ、今日の計画について考える。今日は大川の滝を見て、平内海中温泉に入り、1時半の屋久島2に乗って鹿児島まで帰る予定だ。


平内海中温泉はいつもは海中にあって、干潮の前後2時間だけ入る事が出来る珍しい温泉だ。温泉好きとしては外すわけにはいかない。今日は干潮が12時くらいなので、大川の滝を先に見て、10時過ぎくらいに平内海中温泉に行こうと思っている。


朝食を食べ、宿を後にする。振り返ると屋久島の豊かな自然が広がっていた。


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縄文杉じゃなくても、白谷雲水峡じゃなくても、屋久島の自然を感じる事は出来る。何気ない一つ一つの風景が心を打つ。


道に降りてバス停を目指す。バス停は宿に近いバス停ではなくて、もう少し先のバス停から乗る予定。早朝だとそこからしか大川の滝方面のバスが出ていないのだ。


こういう時、バスって不便だなあって思う。でも、歩く事で感じたり、発見したりする事も多い。まあ、散歩気分で楽しみながら行こう。


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しかし、暑い。とにかく暑い。まだ朝だと言うのに気温はぐんぐん上がってる感じだ。日なたをなるべく避けて日陰を歩くようにする。ギリシャの人は昼間は出歩かずに、夕方涼しくなってから出かけるそうだけど、この暑さだとその気持ちがよく分かる。


やがてバス停に着いた。相変わらず風は強くて、段々不安が増してきた。バス停の近くにいた人にフェリーの状況について聞いてみた。


屋久島2はもう欠航だよ。あれは波が3メートルあったら欠航するからね。トッピーは4メートルまで大丈夫だけど、台風が近づいてきているし、トッピーも危ないよ。帰るなら早く帰った方がいい。」


地元のおじさんの予言めいた言葉に僕はかなり焦り始めた。今日もしも帰れなかったら、多分台風の影響で明日も明後日も帰れない。さすがにそれはマズイ。


すぐにネットでトッピーの時刻表を調べた。これからだと12時の便が一番早い。もうこれで帰ろう。


少し時間があるので、せっかくやしと思って、平内海中温泉を諦め、その少し先にある湯泊温泉に行く事にする。ここなら24時間いつでも入れるし、海のすぐ近くにあって風情を感じる事もできる。


そうと決まればと早速バスに乗る。いつものようにバスの運転手さんと話すと、この大川の滝行きのバスは本当なら回送のバスだそうだ。でも、せっかくだしという事でお客さんも乗せているらしい。


「お客さんすごくめずらしいよ。滅多に人は乗らないからね。」

と言われた。ついでに帰りのバスについてもいろいろ聞いておく。本当にこの旅行ではバスの運転手さんにお世話になってるなあ。


湯泊で降り、坂を下って海に向かう。海の近くに浴槽が見えてきた。裸の男の人が近くに立っている。よし、俺も入るぞー!と浴槽をよく見ると


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お湯が少ししか入ってない。なぜ!?すると裸の男の人が、

「今は掃除中だから、後1時間くらい入れないよ。」

と教えてくれた。ええ!掃除中!?横の主浴槽らしきところでは確かに掃除をしている。


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ここまで来て掃除中、、がっかり。あ、でももう一つ海のすぐ側にも浴槽があることを思い出し、聞いてみる。


「ああ、それならこの先にあるよ。でも今は波が高くて入れないよ。」

まあ、とりあえず見に行こうと思い、歩いて行くと海のすぐ側に浴槽がある。時々、波が浴槽の中に入ってきている。ワイルド過ぎるだろ、これ!


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まあ、でも入れないこともないし、ここまで来たからには!と意を決して入ってみる。おー!気持ちいい!温度は低めでそれほど温かい感じはしないけれど、ほのかに硫黄の匂いがする。浴槽の端の方にある穴からは温泉も吹き出ているようで、足を入れるとほのかに温かい。


波しぶきをあげる海を見ながら温泉に入っていると、ここ数日の疲れも癒える気がする。入りに来て良かった。


3、40分くらいゆっくり入ってから、衣服に着替えた。再びバスに乗り、宮之浦を目指す。宮之浦が近づくにつれて、空が少しずつ曇ってきた。早く帰れと言われているようで、少し焦る。


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高速船のターミナルはお客さんで一杯だった。みんな台風で欠航する前に屋久島を離れようとしているのだ。何とかチケットも買えて、無事にトッピーに乗ることができた。


屋久島を離れながら、僕は屋久島であった様々な事を思い出していた。何となく思い立った屋久島旅行だけど、思い出に残る旅行になった。


さよなら、そしてありがとう。


トッピーは2時間程で鹿児島に着いた。鹿児島は屋久島とはうって変わって快晴。この違いは何なんだ!?


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あまりの暑さに鹿児島観光もそこそこに温泉に入る事にする。知らなかったけど、鹿児島には街中に数多くの温泉がある。県庁所在地の街中にこんなに多くの温泉があるところは日本中探してもあまりないと思う。


その中の一軒、滑川温泉に入ってみた。銭湯料金で源泉掛け流し。日焼けした肌に気持ちいい。なぜか歌謡曲がかかってるところもいい感じ。


温泉から上がって鹿児島駅へ。電車に乗り、バスを乗り継いで鹿児島空港に着いた。


フライト時刻まではまだ時間があるので、とりあえず夕飯を食べる事にする。鹿児島空港は地方の空港にしては大きくて、いろいろなお店がある。その中の一軒、大空食堂に入ってみた。


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なぜここにしたかと言うと、鶏飯バイキングというのが気になったのだ。由来も書いてあって、奄美大島の人たちが鹿児島から来た役人たちをもてなすために作った料理、とある。どんなんやろ!?


お店の人に作りかたを聞いて、早速やってみる。ご飯に錦糸玉子や椎茸、刻み海苔などをのせて、最後に鶏肉が入った鶏ガラスープをかける。何かめっちゃ美味しそう!


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この鶏飯はバイキングなので、食べ放題。これで580円は安い!鶏ガラスープはどうなんやろー?って思ってたけど、様々な具とベストマッチしていてすごく美味しい。


周りを見ると、安さからか物珍しさなのか鶏飯を頼んでいる人が多い。他の人たちも「美味しい!」と舌鼓をうっていた。この鶏飯はかなりヒットかも。屋久島旅行の最後のご飯がこの鶏飯っていうのもいい感じだ。


やがてフライトの時間になり、飛行機に乗り込んだ。そして離陸。鹿児島の町の光が小さくなり、やがて遠くなった。


この屋久島旅行は4日間の旅だったけど、何だかとても長かったような気がする。それは思い出の多さと比例しているのかもしれない。


屋久島から帰ってしばらく経つけれど、時折島の事を思い出す。屋久島で出会った人たちと豊かな自然が僕の心を揺らめかせるのだ。